南東北病院グループ / リハビリテーションへの取り組み(6)
脳卒中のリハビリに強み リハビリロボットも7年の実績
総合南東北病院(岩沼市)リハビリテーション科
理学療法士
安孫子 洋 課長
Hiroshi Abiko
PT 68名 / OT 45名 / ST 9名
※関連施設を含む
総合南東北病院(岩沼市)について
当院は二次救急病院であり、診療科も脳卒中などを扱う脳神経外科を中心に、さまざまな診療科が存在します。
それに対応すべく、セラピストの数も年々増え、急性期から回復期、生活期まで、一貫してリハビリテーションを提供できる体制です。
認定資格を持つ理学療法士も、20名ほどが在籍しています。これだけの人数がいるという施設は多くはありません。患者さんに質の高いリハビリを提供しようと勉強し、頑張っています。
脳卒中のリハビリに強み
急性期を過ぎてからご自宅へ戻る前に、もう少しリハビリを続ける患者さんは、当院であれば、回復期リハ病棟、あるいは、地域包括病棟へ移ることになります。
回復期リハビリの対象疾患のおよそ半数は脳神経外科の患者さんになります。宮城県では県南地域の脳卒中リハビリは「南東北」と言われるようになってきました。
末梢神経磁気刺激装置
脳卒中のリハビリですと、通常は電気刺激を手足の神経や筋肉に与える方法を用いることが多いのですが、電極を貼るタイプだと痛みが強く、断念してしまう方がいらっしゃいます。そこで、当院では磁気刺激を用いた末梢神経磁気刺激装置を使っています。痛みがほとんどなく、麻痺している筋肉をより動かすのに有効です。服の上から電極を貼らずに使えます。
私たちの研究では、使った人たちのほうがADL(注)が上がりやすく、在院日数の短縮にも繋がっています。メーカー主催の研修会でも講演をさせていただいています。
ロボットスーツHAL®
ロボットスーツHAL(医療用下肢タイプ)は、神経難病の患者さんに装着してリハビリを行う治療機器です。微弱な筋肉を動かそうとする神経を拾い上げて増幅し、アシストしながら歩行運動を繰り返します。
これは、3週間の入院治療の中で用います。半年に1度くらい定期的に受ける方もいらっしゃいます。
効果としては、運動機能が良くなりますが、やらずに過ごしていると、また落ちてきてしまいます。良くするというよりは、機能が低下する時間を先延ばしして、自立した生活を長く続けられるようにするリハビリになります。
質量ともに充実したリハビリを提供
脳卒中の患者さんや、ご高齢の方が入院されて、一番気をつけるのは廃用症候群です。身体を動かさない状態だと、体力、筋力が落ちてしまうのです。その結果、寝たきりになってしまわないよう、当院では急性期でも、多くの場合翌日からリハビリテーションを開始します。
回復期においても、リハビリの量を確保して廃用症候群の予防に努めています。診療報酬では1日3時間がリハビリの上限ですが、施設によっては人員不足でそこまでリハビリができないこともあります。当院では質、量ともに充実したリハビリを行い、機能回復への良好なアプローチができているかと思います。
地域の人々を支える
行政や地域からの依頼に対しても積極的に協力しています。岩沼市の「認知症初期集中支援チーム」はその一例で、認知症の方の困難事例の解決に向けたご自宅の訪問や環境調整などに、当院のセラピストが参加しています。
また、先日の能登半島地震では、県医師会から当院に「災害派遣医療チーム」派遣の要請があり、PTとして私も支援にうかがいました。
認知症予防については、認知と運動を組み合わせた「コグニサイズ」が有効だということで、プログラムを開発した国立長寿医療研究センターの研修を受け、地域の皆様に還元できるよう、認知症予防教室などでお伝えしています。
(注)ADLとは、Activities of Daily Livingの略。日常生活を送るために最低限必要な動作のこと。高齢者などの身体機能を測る指標として用います。
■ 情報ワンポイント
[総合南東北病院(岩沼市)]
○病床数 271床
○回復期リハビリテーション病棟50床
○地域包括ケア病棟40床
[併設施設]
○介護老人保健施設サニーホーム(100床)
○南東北訪問看護ステーション
○南東北相談支援センター
○南東北地域包括支援センター
■ 認知症の治療について
総合南東北病院では、認知症の新薬レカネマブの治療を開始しており、言語聴覚士(ST)への検査オーダーも増えています。
ご自身やご家族などで気になる症状があれば、早めに専門医を受診してみてください。
総合南東北病院(岩沼市)
宮城県岩沼市里の杜1丁目2-5
[アクセス]
● 仙台空港より車で15分
● 仙台東部道路 岩沼インターより車で2分
● 東北自動車道 白石インターより車で45分
● JR岩沼駅よりタクシーで5分
[南東北病院グループ / リハビリテーションへの取り組み 目次 ]
〇 特集セラピスト:はじめに
① 社会生活への復帰を支える南東北グループのリハビリテーション
南東北グループ リハビリテーション部門 山口 和之 ゼネラルマネージャー
② 救命救急治療を終えた方、手術をされた方の急性期リハを担う
総合南東北病院 リハビリテーション科 若林 由起子 科長補佐に聞く
③ 急性期から回復期、在宅までを担う 首都圏リハビリテーションの拠点
総合東京病院 リハビリテーション科 原島 宏明 科長に聞く
④ 急性期に加えて回復期病棟を新設最新のADL室でトレーニング
新百合ヶ丘総合病院 リハビリテーション科 松本 恭徳 主任に聞く
⑤ 最新の手の訓練用ロボットを導入し一人ひとりに最適なリハビリを提供
世田谷リハビリテーション病院 リハビリテーション部門 渡辺 重人 科長に聞く
⑥ 脳卒中のリハビリに強みリハビリロボットも7年の実績
総合南東北病院(岩沼市)リハビリテーション科 安孫子 洋 課長に聞く