新百合ヶ丘総合病院 院長/メディコンパスクラブ理事 笹沼仁一先生に聞く
新百合ヶ丘総合病院のミッション
首都圏における高度専門医療と地域への貢献
新百合ヶ丘総合病院 院長
笹沼 仁一 先生
Dr. Jinichi Sasanuma
【 専門科目 】 |
救急から小児・産婦人科を含めた地域医療を担い、「がん、心疾患、脳神経疾患」を中心とする高度専門医療に力をつくす新百合ヶ丘総合病院。メディコンパスクラブが提携する川崎市麻生区の高機能総合病院です。
サイバーナイフ、手術支援ロボット「ダヴィンチ」などの高度医療機器を多数導入し、南東北病院グループの基幹病院として世界でも最先端の医療を目指しています。
また、新百合ヶ丘総合病院では、病気の早期発見と早期治療を可能とする予防医学にも力を入れ、PET-CTを利用した「がんドック」などの高精度健診・ドックサービスの提供にも努めています。
新百合ヶ丘総合病院を率いる笹沼仁一院長に、理想とする医療の姿や理念について、開院を前にお話し頂いた内容を掲載いたします。
(注)新百合ヶ丘総合病院は2012年8月1日に開院し現在に至っています。
新百合ヶ丘総合病院の概要
—これからオープンする新百合ヶ丘総合病院について、どのようなビジョンをお持ちでしょうか。
私たちは地域医療と高度専門医療を新百合ヶ丘総合病院の二つの柱と考えています。
新百合ヶ丘総合病院は、川崎市の公募に応じ『川崎市北部医療圏の救急急性期医療を補い、小児科・産婦人科などの診療科目を持つ総合病院』として開設するに至りました。
川崎市北部地域は救急医療の充実が切迫した課題のひとつでした。同時に、この地域では年間1500人以上のお子さんが生まれているのですが、産科施設がひとつもありません。小児科の入院病棟もないことから、地域の急性期医療を担い、分娩施設と小児科の入院病棟を立ち上げることが急務なのです。これらは地域になくてはならない医療であり、行政からも住民の皆さんからも求められている私たちの使命でもあるということですね。
非常に意味のある医療なのですが、こうした領域は、逆に医療を担う側の負担も大きく、医師や看護師が集まりにくいという現実があります。
そこで私たちは高度専門医療と予防医学をもうひとつの柱として考えています。これは南東北グループが得意とするがん、心臓病、脳卒中、その他生活習慣病などに対する先進的な医療ですが、この二つを両輪とすることで、優秀なドクターやスタッフに意欲的に参加して頂き、やりがいのある医療、患者さんが望む良い医療、魅力ある病院をつくっていこうと考えています。
学術的にも価値のある活動を行い、医療従事者のモチベーションを高く維持し、若い優秀な人材を育てる。そうした存在として認められることで、はじめて将来にわたる安定した病院運営も確かなものとなるはずです。
患者さんに選ばれる病院というのは、病院スタッフにも、医師にも、地域にも選ばれるものであるとすれば、私たちはそんなモデルとなるような病院のあり方を新百合ヶ丘で実現したいと考えています。
「すべては患者さんのために」という南東北病院グループの共通理念のもと、病院としての社会的使命を果たし、患者さんが安心してかかりたいと感じる病院となるよう努力していく考えです。
南東北病院グループの基幹病院として
—南東北グループは、陽子線治療、PET検査など、がん医療において日本を代表する先進的な存在として注目されていますが、南東北グループの医療ネットワークがバックグラウンドにあることで、周囲からの期待感も大きいのではないでしょうか。
首都圏では郡山市のような大規模な治療施設を作るのは難しい面もありますから、南東北病院グループというバックグラウンドを持ち、互いに連携して最新の高度な治療をしていくというのは、ほかの病院にはないアドバンテージになるでしょう。
PET(ペット)については、川崎市内では初めての導入ということになります。南東北グループの総合南東北病院(郡山市)では6台のPETが稼働し、10年以上の実績を積んできましたが、川崎市内では導入している病院がたまたまありませんでした。ですから、それだけでも注目を集めています。新百合ヶ丘総合病院としては、南東北グループが培ってきた予防医学の実践、がんドック、がん検査のシステムの浸透に努めたいと考えています。がん予防の啓発活動も大事になってきます。
メディコンパスクラブ会員の皆様には、これからは新百合ヶ丘でもPETドックや脳ドックを受けて頂けるようになります。また、高機能病院としてのポテンシャルをいかし、一般の診療や救急時の対応、快適な入院機能においてもご期待に応えられる存在になれるよう、一層努力してまいります。
写真左:PET-CT
今まで発見しにくかった小さな「がん」を画像として映し出し、高い確率で見つけ出すことができる画期的な検査方法です。40分ほどのスクリーニングで、一度に全身のチェックを行なうことができます
写真右:PET症例画像(がんやがんと疑われるところが画像で赤く確認できます)
—笹沼先生は東京クリニックなどさまざまなグループ施設の立ち上げにも携わってこられましたが、現役の脳神経外科医として病院経営にも関わることをどのようにお考えでしょうか。
どんなに社会的な意義のある医療でも、経営的に維持できなくては意味がありません。医療を変えていくには経営的な変革の努力も必要なのです。
私が35歳のとき、福島市に脳外科の救急をという要請から現在の南東北福島病院を立ち上げました。その経験のなかで、医師や働く人たちの環境を変えていくことが病院の質の向上につながり、患者さんにも役立つということに気づき、理事長室長という肩書きで病院のマネジメントにも関わるようになっていきました。
しかし、医師の仕事をなくして医療の現場から乖離してしまうと考え方も現実的でなくなるし、スタッフの心も離れてしまうと思います。ですから医療の現場を離れないことが病院のマネジメントにとってはとても大事なことだと思っています。
新百合ヶ丘総合病院が目指す新しい医療—高度専門医療の実践
—魅力的な医療ということでは、新百合ヶ丘総合病院はいろいろな最先端医療機器の導入でも注目されていますね。
開院と同時に手術用ロボット『ダヴィンチ』を導入します。当初は泌尿器科での利用を想定していますが、産婦人科などにも発展させていく予定です。
外科治療では現在、内視鏡手術がかなりの割合をしめています。こうした手術は体への負担が少なく、肉眼では確認できない微細構造が見えるので、出血を回避した安全な手術の可能性が高まります。内視鏡の低侵襲性、短期間で治療するという方向性は今後も一層求められるものと思いますが、ロボット手術はそうした要求に応えられる大きな可能性を持っています。
実は世界的にはかなり普及しているのですが、日本ではまだ希少です。先日のメディコンパスクラブセミナーで講演を頂いた東京医科大学病院泌尿器科主任教授の橘政昭先生は、日本におけるこの分野の第一人者ですが、私たちは橘先生にもご指導をいただきながら、ロボット手術の臨床拠点化も進めたいと考えています。
そのほかにも高機能の検査機器や治療機器を多数導入し、十分な診断と治療ができるよう配慮しています。
サイバーナイフは高性能の新型で従来は脳と頭頸部が主体でしたが、全身治療ができるようになり、治療時間も短縮されます。血管撮影装置も高機能のものを導入し、特に脳と心臓に関しては24時間緊急対応できる準備を整えてきました。
写真左:第4世代サイバーナイフ
体にメスを入れず、がんなどの病巣だけを多方向から狙い、放射線(エックス線)を集中照射する定位放射線治療装置
写真右:手術支援ロボット「ダヴィンチ」
立体感のある高解像度の画像で患部を拡大し、肉眼では確認できない微細構造を見ながら医師が3本のロボットアームを遠隔操作で動かして手術を行います
センター方式の導入と総合診療的視点
—診療体制としてはセンター方式を導入されるそうですが。
センター方式はすでに総合南東北病院でも導入していますが、新百合ヶ丘総合病院でも診療科の壁を取り除き、適切な診断と治療が行われる環境を整えていきます。これからの医療は内科をベースに外科とうまく連携して診断から治療まで繋げられるようにすることが大事なんですね。
—診療についての考え方は、総合診療と呼ばれるものにも通じる気がするのですが。
専門医療のひとつとして総合診療が成り立つことがこれからは大事になると思います。
新百合ヶ丘総合病院では名称の問題は別にしても、一般内科、総合内科などが総合診療という役割を果たし、またそのように認知されるようにしたいと考えています。
患者さんはいくつもの病気を持っていることが多いので、トータルにケアし、治療できる医療が求められます。患者さんに対して、「今、これが問題だ」という的確な診断を下し、専門医療に橋渡しをする。そういう医師を育てたいですし、そういう気持ちが浸透するようにしていきたいと思っています。
予防医学にも総合診療的な視点があります。例えばメディコンパスクラブ会員の皆様のドックの結果はデータベース化してチェックしたり、体の変化を見逃さない努力をしているわけですね。
新百合ヶ丘総合病院、皆さんの期待が大きいと感じています。その期待に添えるよう患者さんの役に立つ病院にしていきます。皆様のご理解とご支援を心よりお願い申し上げます。
写真:南東北グループ 医療法人社団 三成会 新百合ヶ丘総合病院
〒215-0026 神奈川県川崎市麻生区古沢都古255 TEL 044-322-9991(代表)9:00~17:30