メディコンパス/2019年7月取材:
Medical Examination and Medical Treatment

大阪なんばクリニック 院長 中川原 譲二先生に聞く なんばスカイオに誕生—大阪なんばクリニックとは

高度な健診と専門性の高い診療を融合したクリニック


医療法人社団 新生会 大阪なんばクリニック院長
国立循環器病研究センター 脳神経外科 客員部長/医学博士
中川原 譲二 先生
Jyoji Nakagawara M.D.,PH.D.
 

【 専門分野 】
脳神経外科
● 日本脳神経外科学会 脳神経外科専門医
● 日本脳卒中学会 脳卒中専門医
● 日本脳卒中の外科学会 技術指導医
● 日本核医学会 PET核医学認定医
○ 資格 産業医 / 難病指定医
【 Profileプロフィール 】
1978年 札幌医科大学医学部 卒
1981年 国立循環器病センター 脳血管外科レジデント
1985年 (財)大阪脳神経外科病院 医局長
1994年 中村記念病院 脳神経外科部長
2006年 中村記念病院 診療本部長・脳卒中センター長
2012年 国立循環器病研究センター
    脳卒中統合イメージングセンター センター部長
2016年 国立循環器病研究センター
    循環器病統合イメージングセンター センター長
2018年 (一財) 脳神経疾患研究所RIセンター センター長
2018年 大阪なんばクリニック 院長

 

大阪ミナミの中心地にオープンした「大阪なんばクリニック」。健診と診療を融合して運営するまったく新しいタイプのクリニックです。
南海なんば駅に直結するランドマークタワー「なんばスカイオ」9階に位置し、明るく広大なワンフロアを占めるクリニックは、ワンランク上のビジネスクラス。最新の医療機器を導入した先進的な予防医学と、専門性の高い診療を担い、がん、心臓疾患、脳卒中の再発予防にも力を入れています。
クリニックを率いるのは、中川原譲二院長。脳神経外科医として国立循環器病センターで脳血管病の診断と治療に取り組み、長年にわたって多くの患者さんの人生を支えて来られました。
健康な人生を送るために、これからの医療のあり方を提案する「大阪なんばクリニック」の魅力と特長について、中川原院長にお話をうかがいました。

高度な予防医学としての健診機能と先進医療に繋がる専門性の高いクリニック

「大阪なんばクリニック」は、南海なんば駅に新設された複合施設「なんばスカイオ」の9階にあり、駅からは専用エレベーターを利用できます。とてもアクセスに優れたクリニックですから、皆さんにもメリットを感じていただけるかと思います。
「大阪なんばクリニック」は、主に3つの機能を果たしています。
第1の機能は、一般診療機能です。大阪の中心地にある「かかりつけクリニック」として、頭痛や腹痛、風邪でも予約なしに利用できます。
第2の機能としては、高度な予防医学としての健診機能と、高度医療、先進医療に繋がる専門性の高いクリニックとしての機能です。
これは大阪なんばクリニックが先駆けとなる新たな医療モデルで、がん、心臓疾患、脳卒中などの早期発見とともに、治療後の再発予防を含めた患者さんのフォローアップを当クリニックの専門医が継続して行います。
第3の機能としては、BNCT(ホウ素中性子捕捉療法/本誌7頁参照)や陽子線治療に象徴される南東北病院グループの進んだ医療の前線としての機能です。
関西空港に直結する「なんばスカイオ」という立地は、海外からのアクセスポイントして最適であり、当クリニックに期待されている大きな役割でもあります。

人生100年時代の予防医学

「人生100年」が、時代のキーワードになっています。多くの方は高齢になるといろいろな健康不安を抱えますから、これはなかなか大変な話です。
では、高齢になっても健康に暮らすためにはどうすれば良いか。これは社会の課題でもありますが、それぞれが人生100年というスケジュールで若いときから予防に努めることが求められる時代に入ってきました。
予防医学は、将来の自分や家族を守ることにほかならず、会社経営者であれば、会社や社員を守ることにつながります。
特に40代、50代の働き盛りの年齢は、がんの発症率が増加します。同時に脳、心臓血管病のリスクも高まりますから、それを発症する前に発見して病気のリスクを減らし、仮に発症しても軽症に抑えられるような健診の質が求められます。
当クリニックでは大学病院が導入するような最新の診断機器を導入し、こうした要請に応えます。
MRIを用いた脳ドックでは、脳のMRI画像を読影の医師とダブルチェックし、見落としがないよう細心の注意を払っています。
もしも気になるところがあれば二次検査で対応し、脳血管などの治療が必要な場合は近隣の信頼できる提携病院や、南東北病院グループの医療連携を最大限にいかし、先進的な治療施設を迅速にご紹介しています。これは脳ドックに限ったことではありません。一貫してスピード感のある対応で、皆さまにもメリットを感じていただけるかと思います。

専門医がそろう先進的クリニックの意義

大阪なんばクリニックは、専門病院の外来が独立して外部にあるようなイメージです。治療後も緊密な医療連携のもと、当クリニックの専門医が継続して診療にあたり、患者さんの社会生活や就労を支えています。
がん、心臓病、脳血管疾患の患者さんでも病気とつきあいながら働き、毎日を送っている方はたくさんいます。
ところが、治療や手術を受けた病院でそのまま外来診療を続けられるかというと、なかなかそうはいきません。
多くの場合、どこか別のクリニックに通うことになりますが、患者さんたちは、治療でさまざまなデバイスが体の中に入っていることも多く、特殊な対応が必要になります。
抗凝固剤、抗血栓剤などの服用でもリスクを考慮した薬剤コントロールが求められますから、クリニック側に病院の診療、治療の流れを理解した専門知識が必要となるのです。
再発予防のための維持管理という意味でもこれは大事な視点です。

国立循環器病センターで脳血管の難病「もやもや病」専門外来を担う

私は国立循環器病センターで「もやもや病専門外来」を担当していました。
「もやもや病」とは、動脈硬化がないのに脳の血管が徐々に詰まってしまう難病(特定疾患)です。1950年代に日本で発見され、脳血管が煙のようにもやもやと見えたことから名づけられました。その病態や背景はまだ解明されていませんが、1975年頃になって顕微鏡手術が始まり、世界ではじめて大阪の国立循環器病センター(注1)でバイパス手術が行われ、治療への有効性が示されました。
もやもや病の血管は普通の血管の半分の径しかありません。0・5ミリくらいの血管と血管をつなぐのですから、相当な技術が必要な手術です。
私は、その時代のドクターたちのもとで脳血管外科の技術を学び、「もやもや病」の患者さんたちに向き合ってきました。患者組織が誕生してからもずっと会のサポートを続け、当クリニックでも継続しています。
この病気は子どもでも大人でも発症し、患者さんは生涯病気とつきあっていかなければなりません。外科治療がゴールではありません。再発予防や、高次脳機能障害(注2)にも適切に対応し、病気が悪化しないように、ずっと支援することが必要なのです。
国立循環器病センターでは、脳血管手術だけでなく、脳の病変を画像化したり、脳の血流量の測定法を標準化する研究にも取り組みました。それによって画像診断技術も発展し、脳卒中などの脳血管疾患に対する理解も前進したと思います。
(注1)国立循環器病センター/脳卒中と心臓病の患者さんの高度専門医療に取り組む世界有数の施設。国循。
(注2)高次脳機能障害/交通事故による頭部外傷や脳卒中治療後、外見上は回復したように思えるのに、日常生活や社会生活への適応が困難な症状が現れる後遺障害。

予防健診の意義

イギリスでは、心筋梗塞、脳卒中と認知症のリスクが同じものとして啓発し、健診を呼びかけています。循環器疾患を予防することが認知症を予防することにつながるというのです。実際に生活習慣の見直しを徹底して行うと認知症が減ったというデータも出されています。
日本でも予防の重要性に変わりはありません。私たちはライフスタイルを見直す契機として予防健診が役立つよう、受診された皆さんをサポートしています。血圧、糖尿病、脂質のコントロールや禁煙も早くスタートできれば、病気のリスクも軽減します。

認知症と脳血管の動脈硬化

健康長寿を実現する上で、認知症は大きな課題です。皆さんも関心をお持ちかと思います。
認知症は脳の細い血管の動脈硬化で起きる血管障害によることが多いという研究発表が最近出てきています。
脳にβアミロイドやタウなどの物質が蓄積すると、その結果神経細胞が死んでいきます。ところが、βアミロイドやタウと呼ばれる物質は神経細胞から出る老廃物であり、通常でも常につくられています。うまく外に運び出せず、たまってしまうのが問題になるのです。
その原因となるのが脳の血管の動脈硬化です。それによって老廃物の出口がつまってしまい、認知症が起きるというのです。
ですから、今では脳の細い血管の動脈硬化などによる小血管病や白質病変を積極的に見つけようという時代に入ってきました。

脳の血管の病変を早期発見する

脳卒中でも認知症でも、脳血管の病変を早期に見いだしてリスクコントロールする意義は大きいのです。
大阪なんばクリニックでは、大学病院クラスの高精度のMRIを導入し、こうした病変の発見に努めています。
脳ドックでは、小血管病のあるなしに注目し、脳の血管がつまっていないか、脳動脈瘤がないかを調べます。そして、頸動脈に動脈硬化やプラークによる閉塞がないか、エコー検査も加えてチェックしています。
脳のMRI検査や胸部CTなどを含むドックの場合、検査はほぼ半日で完了します。後日、詳しいレポートをお出ししますが、検査画像の結果はその日のうちにチェックして面談のなかで説明し、安心を得て帰っていただくようにしています。

MRIによる脳小血管病変の検査画像

白質病変(白い斑点)

微小出血(黒い斑点)

充実した診療科と高度な専門外来

診療科は充実した内容で、多くの専門外来を設置しています。
脳神経外科としては脳卒中・認知症予防のほか、頭痛・頸部痛・肩こり・めまいや、高次脳機能障害の専門外来があります。
2019年4月からは痛みの治療センターがスタートしました。大学にあるペインクリニック内科がそのまま引っ越してきたような高度な治療を行います。Cアームという透視装置を使い、X線で正確に部位を特定し、そこにカテーテルなどで薬を注入する神経ブロック療法や、東洋医学的治療も可能です。
整形外科は変形性関節症に対する脂肪幹細胞を用いた治療を目指します。
陽子線治療外来もあります。患者さんのセカンドオピニオンや、すでに南東北がん陽子線治療センター(福島県郡山市)で治療を受けた関西在住の皆さんのフォローアップに努めています。

女性にやさしい検診と診療

当クリニックでは、婦人科にも力を入れており、女性の乳腺外来もあります。
とりわけ婦人科検診では乳がん、子宮がんをはじめきめ細かに対応し、相談に応じています。
診察も検査も女性が行いますから、抵抗感も少ないかと思います。通勤や買い物のついでに立ち寄り、気軽に利用していただけます。

海外からアクセスできる先進がん医療拠点

BNCT、いわゆるホウ素中性子捕捉療法は、今から40年以上前、脳神経外科の教科書に「夢の放射線治療」と紹介されていました。
1個の細胞を越えないレベルでがん細胞を殺傷し、隣の正常な細胞は生き残る。がん細胞が正常な組織に散らばっていてもがん細胞だけをターゲットにした治療ができるというのです。私は自分が医者であるうちはこんな夢のような治療は実現しないと思っていました。ところが、メディコンパスクラブの渡邉一夫理事長(南東北病院グループ総長)はつくりあげました。世界初です。
これが臨床として動き始めると、世界が注目し、海外の患者さんが治療に訪れるようになるでしょう。そのためにも、「大阪なんばクリニック」を海外の患者さんのアクセスポイントとしても機能するように育てていきたいと考えています。