メディコンパス/2023年12月取材:Southern TOHOKU Healthcare Group.

南東北病院グループ / 認知症への取り組み

エキスパートドクターに聞く「認知症の診断と治療」の最新情報

 メディコンパスクラブが提携する南東北病院グループでは、「がん」「心疾患」「脳血管疾患」の征圧を目指し、高精度の画像診断装置による疾病の早期発見と早期治療に努めています。
 認知症においても、「アミロイドPET(ペット)検査」をはじめとする早期診断に向けた臨床研究や新薬の治験に携わり、外来での診療にも力を注いできました。
 アルツハイマー病の新薬「レカネマブ」が話題になり、認知症への関心が高まるなか、私たちはどのように認知症に備えれば良いでしょうか。認知症のスペシャリストに、診断と治療について解説していただきました。

認知症特集 目次

 
はじめに 一般財団法人 脳神経疾患研究所 最高顧問 吉本 高志 先生
認知症の早期診断と最新治療 総合東京病院 もの忘れ外来 羽生春夫 先生
脳と腸 認知症との関わり 東京クリニック 認知症・もの忘れ外来 堀 智勝 先生
酒と認知症の関係について 東京クリニック 総合診療科 北本 清 先生
アルツハイマー病の解明と画像診断 東北創薬・サイクロトロン研究センター 所長 松田博史 先生

はじめに

南東北病院グループ
一般財団法人 脳神経疾患研究所 最高顧問
吉本 高志 先生
Takashi Yoshimoto M.D., Ph.D.
第19代東北大学 総長 / 東北大学 元病院長
東北大学 名誉教授 / 第9代大学入試センター 理事長
医学博士
 
専門分野
脳神経外科学

学会・叙勲 等
●社団法人脳神経外科学会初代理事長 / 日本学術会議会員 /
 日本医学会監事 / 文部科学省参与等を歴任
●瑞宝大綬章受章(平成30年春の叙勲)

Profileプロフィール
秋田市出身
1968年 東北大学医学部卒業
1988年 東北大学教授脳神経外科学
1994年 東北大学医学部脳疾患研究施設長
1999年 東北大学医学部附属病院長
2001年 東北大学大学院医学系研究科長・医学部長
2002年 東北大学総長
2004年 国立大学法人東北大学総長
2006年 東北大学名誉教授
2007年 独立行政法人大学入試センター理事長
2013年 大学入試センター名誉教授
2013年 一般財団法人脳神経疾患研究所最高顧問

認知症基本法

 厚生労働省の発表によりますと、我が国の認知症患者は2025年に約700万人になる見込みとされています。
 これらの事実を受けまして、国は、本年6月に、認知症に関する我が国における初の法律であります「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」を成立させました。
 認知症の人が尊厳を保持しつつ、希望を持って暮らす事が出来るよう、認知症の人を含めた国民一人一人が個性と能力を十分に発揮し、相互に支え合いながら「共生」する活力ある社会の実現に向けて、国と地方が一体となって施策を講じていく事が述べられております。

認知症の新薬

 この認知症との「共生」を掲げた基本法が成立したまさに本年に、新しいタイプの認知症の治療薬が日本でも保険適用となり、多くの人々の注目を集めています。
 新薬の登場、更に同様の効果を持った第二の薬剤も厚労省の承認に向けて動いているなどの事実は、認知症の当事者にとりましては無論のこと、支援されているご家族の方々にとりましても、この医療現場での新薬使用の可能性は、大きな「分岐点」になると言っても過言ではないと思います。

治療体制

 認知症の患者さんにとりまして、大きな期待のかかる現状ですが、多くの課題があることも事実であります。その中で、一つは、対象患者さんが、限定されている事です。現時点では、発症早期の人と軽度認知障害の人に限られております。もう一つは、新薬の使用時、生命に関わるほど重症にはならないと言われておりますが、副作用の合併症がある事です。
 これらの対策には色々なことが考えられておりますが、前者に対しては、治療の適応を厳密に診断する事です。診断のためにはPET検査が必須ですが、その患者さんの選択、更には画像の診断には経験豊かな優秀な医師によらなければなりません。そして、後者の副作用に関しても、これまで認知症の患者さんの治療を長年にわたって診療されてきた、十分実績がある医師の管理のもと、定期的にMRIなどによる検査の必要があります。
 従いまして、特に新薬の治療にあたっては、医療機関をある程度選択する事が大切です。医療人の一人として、新薬を用いた治療は、初めの時期、特に開始から2、3年が極めて重要であると思います。
 極言しますと、認知症患者さんの充分な診療経験のもとに、治療の患者さんの選択と治療中の対応です。

人生100年

 最終的にはこの新薬の登場が、「人生100年」を迎えた日本の長寿社会のさらなる活性化につながる事を大いに期待いたしたいと思います。
 

(令和5年師走の郡山にて)
ワンポイント 認知症とは?

 認知症とは、何らかの病気によって脳の神経細胞が傷つき死滅するため、記憶の障害などが起き、日常生活に支障をきたす状態です。
 つまり、認知症とは〝症状〟を指す言葉であり、原因となる病気にはさまざまなものがあります。
 認知症で一番多いのがアルツハイマー型認知症で、全体の60%以上を占めるという統計もあります。認知症はほかにも、脳の病気が原因となる血管性認知症や、レビー小体型認知症などがあり、それぞれのタイプによって治療の仕方も異なります。
 治る認知症もありますから、早めに専門医を受診してください。

認知症特集 目次

 
はじめに 一般財団法人 脳神経疾患研究所 最高顧問 吉本 高志 先生
認知症の早期診断と最新治療 総合東京病院 もの忘れ外来 羽生春夫 先生
脳と腸 認知症との関わり 東京クリニック 認知症・もの忘れ外来 堀 智勝 先生
酒と認知症の関係について 東京クリニック 総合診療科 北本 清 先生
アルツハイマー病の解明と画像診断 東北創薬・サイクロトロン研究センター 所長 松田博史 先生