メディコンパス/2024年8月取材:Southern TOHOKU Healthcare Group.

南東北病院グループ / 高齢化社会を支える南東北グループの介護施設(3)

その人らしさを大切にするダイバージョナルセラピーを実践

南東北グループ
社会福祉法人 南東北福祉事業団
総合南東北福祉センター八山田

坂井 貴子 施設長
Takako Sakai
社会福祉士
介護支援専門員
 

年齢や障がいを超えたふれあいのある施設

 総合南東北福祉センター八山田は、高齢者、障がい者、障がい児のための複合施設で、8つの事業所を一体的に運営しています。そのため、利用者さんの年齢は幅広く、施設全体で見ると2歳から102歳にまで及んでいます。
 利用者さん同士が年齢や障がいを超えて触れ合える機会も多く、中庭で障がいを持つ子どもたちが元気に遊ぶのを、高齢者の皆さんが見て「可愛いね」と、とても素敵な笑顔を見せてくれます。これも複合施設のメリットですね。

特養と高齢者介護について

 高齢者向けの入所施設としては、特別養護老人ホームがあります。「グランプラス八山田」と名づけられた施設で、ユニット型の個室を採用し、トイレ、洗面所付きの個室が、広場のような共有スペースに面して配置されています。65歳以上で要介護3以上の方が利用できます。プライバシーが守られた環境で生活しながら、共有スペースではほかの利用者さんたちと交流したり、食事をしたりします。定員は、長期入所が60名、短期入所が10名です。
 協力病院は、総合南東北病院で、歩いて5分ほどのところにあります。南東北グループ全体の中枢となる総合病院ですから、緊急の対応の時は、とても心強く思っています。

ダイバージョナルセラピー

 老いることは決して悪いことではありません。しかし、年齢を重ねるとできないことが増えて、存在感や自信をなくしてしまいがちです。そうした状態から、楽しさや幸福感を持てる方向へ生活を転換するために、その人らしさは何かを丁寧に把握して具体的な取り組みに活かす方法を、私たちは探っていきます。
 こうした考え方は、ダイバージョナルセラピーと呼ばれるもので、当施設では研修にも努め、実践してきました。
 この実践のなかから生まれたのが、「花咲かじいさん」の作品です。職員たちが、利用者さんと一緒になってつくりあげ、秋の「芸術祭」に展示しました。
 まるでステンドグラスのような巨大なアート作品となり、物語りに沿って絵本のように展開します。材料は、実はペットボトルのフィルムを工夫して使っています。

何か役割や責任を担うことの大切さ

 ある男性の方は、施設の環境になかなか馴染めず、職員はその対応に試行錯誤していました。そこでダイバージョナルセラピーを取り入れ、大工さんをしていた手先の器用さを活かせるように作品製作の場面を増やしてみたところ、急速に落ち着きを取り戻していきました。さらに、拘縮の人が使う介護用品「握り棒」(注)づくりにも進んで関わるようになり、「何か仕事はないかい」と、日々の生活の中で意欲を見せてくれています。
 何らかの役割や責任を担うことの大切さがダイバージョナルセラピーの導入によって、あらためて明らかになってきていると思います。心が動くと、体も動くようになり、意欲、活力が湧いてくるのです。私たちも手応えを感じています。
 このような取り組みが評価され、当施設は福島県の「きらりふくしま介護賞」の施設表彰を受けています。
 こうした実践は一例ですが、当センターでは南東北グループの一員として、利用者さんの尊厳を守り、より質の高い介護福祉サービスを提供できるよう、職員が一丸となって取り組んでいます。

(注)握り棒とは、加齢などで身体が固くなって指が硬直して握り込みが強くなる利用者さんに握ってもらい、拘縮予防に役立てる介護用品です。

南東北グランプラス八山田
特別養護老人ホーム個室 

南東北ライフステップ八山田
障がいグループホーム個室

総合南東北福祉センター八山田の中庭で
プールを楽しむ子どもたち

■ 情報ワンポイント

 総合南東北福祉センター八山田では、地域における福祉介護の拠点として、障がい児、障がい者支援事業においても特色あるサービスを提供しています。
 障がいを持つお子さんを受け入れているのは、児童通所支援事業所「さくらんぼ」と「すだち」の2事業です。発達障がい、身体障がい、医療的ケアが必要なお子さんが利用しています。
 障がいを持つ方の就労継続支援事業所としては「ジョブステップ八山田」があります。本格的なパン作りを行い、販売も自分たちで体験します。市役所や南東北医療クリニックなどで移動販売を行い、地域からも認知されるようになっています。
 また、介護予防についての情報提供にも努め、認知症やその介護についての悩みや不安を気軽に相談できるオレンジカフェ(認知症カフェ)も開催しています。一方通行の講演だけに片寄らないように、認知症の方本人にはやさしくハンドマッサージを行いながら話しかけたり、相談に来られた家族の方の悩みをうかがうなど、交流の仕方もいろいろと工夫しています。

総合南東北福祉センター八山田

障がいグループホーム 南東北ライフステップ八山田

社会福祉法人 南東北福祉事業団
総合南東北福祉センター八山田
福島県郡山市富久山町八山田字土布池55-1
アクセス
● 東北自動車道 郡山インターより車で20分
● 東京駅から東北新幹線で郡山駅まで約1時間10分
● 総合南東北病院から徒歩約5分

[南東北病院グループ / 高齢者介護への取り組み 目次 ]

 
特集 高齢化社会を支える南東北グループの介護施設

人生のさまざまなステージを支援 すべては利用者さんのために
 総合南東北福祉センター 南東北ロイヤルライフ館 佐久間 文彦 施設長に聞く

緑豊かな江古田の森の一画にある日本最大級の総合福祉センター
 東京総合保健福祉センター 江古田の森 中島 寛子 施設長に聞く

その人らしさを大切にするダイバージョナルセラピーを実践
 総合南東北福祉センター八山田 坂井 貴子 施設長に聞く

リハビリ介護サービスを通して三春町とその周辺の高齢者を支える
 三春南東北リハビリテーション・ケアセンター 武藤 克哉 主任に聞く