東京クリニック 院長
金森 博 先生に聞く 東京クリニック新院長就任にあたって
研究と臨床の成果を踏まえた肝疾患 内科疾患の診療と予防
南東北病院グループ 東京クリニック 院長
金森 博 先生
Hiroshi Kanamori M.D., Ph.D
消化器内科
肝疾患全般、内科疾患全般、C型肝炎
アルコール性肝障害、NAFLD/NASH
● 日本肝臓学会認定 肝臓専門医・指導医
● 日本消化器病学会認定 消化器病専門医
● 日本内科学会 認定内科医
● 産業医、労働衛生コンサルタント
1981年 東京大学医学部附属病院内科 研修医・医員
1983年 東京都立駒込病院感染症科 主事
1984年 京都大学医学部医化学第一講座 研修員
1985年 京都大学大学院医学研究科 博士課程・生理系専攻
1989年 東京大学医学部第三内科(日本学術振興会特別研究員)
1990年 国立健康・栄養研究所(科学技術特別研究員)
1992年 東京大学医学部第三内科(文部教官助手)
1993年 イリノイ大学UIUC生化学教室・客員研究員同校医学部内科客員教授1998年 東京大学医学部附属病院消化器内科(特任講師)
2012年 国際・政策銀診療所所長
2022年 東京クリニック院長就任
2022年4月1日より新たに東京クリニック院長に就任された金森博先生。
東京大学医学部卒業後、京都大学、イリノイ大学などでウイルスやRNAに関する分子生物学の研究に取り組んでこられました。
専門は肝疾患から内科疾患全般に及び、臨床経験も豊富です。金森博先生に、これまでの研究の概略や、東京クリニック新院長としての抱負などついてうかがいました。
生化学・分子生物学研究と肝臓などの消化器内科診療
— 金森院長のこれまでの経歴と診療科についてうかがえますか。
東京大学医学部を卒業して東大病院の第三内科で研修医として研鑽を積みました。臨床領域は消化器内科です。特に肝臓・消化管・膵臓疾患が専門ですが、動脈硬化についても研究してきました。
主な研究領域は、分子生物学になります。ウイルスやRNAについて、京都大学、イリノイ大学、国立健康・栄養研究所、東大病院などで、臨床とともに研究に従事してきました。
実際の診療では、急性肝炎、肝硬変、肝臓がんや、原因不明の肝障害の診断・治療とともに、消化器内科全般の診療にあたり、生活習慣病の継続的な治療も行っています。
— 2500人規模の特定集団に対して健康を維持するための健診や診療に、長期的に取り組まれた経験をお持ちだそうですね。
前職で銀行系企業内診療所の所長を務め、健診などを通して約2500人の健康状態を10年間にわたって継続的に観察する機会に恵まれました。
そこでは一般診療のほかに、胃がん、進行大腸がん、前立腺がんの検診を徹底し、がんの征圧に努めました。
脳・心血管イベント(心筋梗塞や脳梗塞などに代表される血管系の病気)の回避のための頸動脈エコーや頭部MRI・MRAによる検査にも力を入れ、感染症予防にも取り組みました。
また、禁煙指導、高血圧・糖尿病・脂質異常症(高脂血症)も重点的に治療を行い、個々人の持続可能な健康について考慮し、一定の成果が得られたと思います。その成果を東京クリニックの診療にも活かしていければと考えています。
東京クリニック新院長として
— 東京クリニック院長に就任されて、どのような印象をお持ちですか。また、今後に向けた抱負などをうかがえますか。
2022年4月1日から、縁あって東京クリニックの院長に就任しました。
東京クリニックは、2006年大手町に開院して16年目を迎える先進的なクリニックです。地下鉄大手町駅に直結し、JR東京駅からも徒歩5分と、とても利用しやすい立地です。
診療科は幅広く、専門の卓越した医師が迅速かつ的確な診療を行っています。
当クリニックの大きな特色は、一般診療に加えて高度な専門外来を展開していることが挙げられます。先進医療機器も充実しています。
今後は、高精度人間ドックや健康診断にもさらに力を入れ、がんの早期発見、早期治療はもとより、生活習慣病の継続的な診療を通して、皆様の健康維持に貢献するクリニックを目指していきます。
何か体に不安があれば、お気軽にご相談ください。
研究領域と臨床領域
研究領域 ウイルス・RNA関連の研究
— 京都大学大学院では、ノーベル賞を受賞された本庶佑先生のもとで研究に取り組まれたそうですね。
私の研究の多くはウイルス・RNA関連のもので、肝臓の免疫に関する研究なども含んでいます。これらは分子生物学の領域になりますが、私が学生の頃は、そうした研究を行っている大学は少なく、京都大学の本庶佑(ほんじょ・たすく)先生が、がんに関係する研究を始められたというお話をうかがい、京都大学の大学院に進みました。
京都大学では、医化学第一講座の研究室に所属し、本庶先生や、後に京都大学ウイルス研究所所長を務める畑中正一先生の指導をいただきました。
本庶先生は、免疫チェックポイント阻害薬の開発で知られているとおり、2018年にノーベル生理学・医学賞を受賞されます。
当時私が行った研究には、成人T細胞白血病の原因ウイルスのタンパクが、増殖因子受容体のRNAを安定化させ、がん細胞の増殖に関与する、というものがあります。
— イリノイ大学ではどのような研究をされたのでしょうか。
アメリカのイリノイ大学に留学したのは、本庶佑先生の招きでイリノイ大学の生化学者デビッド・シャピロ博士が来日し、京都大学で行った講演をうかがったのがきっかけです。
シャピロ博士のRNA研究はとても興味深く、一緒に研究したいと考えて留学を決意します。
イリノイ大学では生化学教室に所属し、女性ホルモンのエストロゲンが、免疫細胞からの攻撃を防ぐ因子を肝細胞に発現誘導することを示し、女性が閉経後に肝障害を起こしやすい理由として考察できるのではないかという研究や、RNA結合タンパクが筋ジストロフィー関係RNAと結合することを明らかにするアフリカツメガエルを用いた研究などに取り組みました。
RNAミーティングという学術集会にも積極的に参加し、最新の研究動向に触れることができたのも大きな収穫でした。
特に注目したのは、RNA進化分子工学です。これは、後にノーベル賞を受賞するジャック・ショスタク博士等を中心として始められ、世界的に大きな研究のうねりを生み出します。生体内には存在しないRNAを生成する技術を用いて目的の機能に最も適したRNA配列を選別するのです。今日、進化分子工学は、基礎研究から創薬まで、多方面に応用されています。
私もそうした手法を取り入れて研究を進め、帰国後は東大病院でC型肝炎ウイルスの複製に関与するNS5Bというタンパクの活性を阻害するRNAを作成しました。
DNAは生物の重要な設計図としての遺伝情報を持ち、RNAの働きによって機能します。RNAはDNAの塩基配列の情報を基に、「転写」「翻訳」などの働きを通してタンパク質を合成します。RNAは生命の起源に関わるものと考えられています。
臨床領域 肝臓の臨床について
— 肝臓を専門とされたのはどうしてですか。
肝臓を専門にしようと決めたのは、東大病院で研修医をしていた頃です。
その当時、肝臓の病気についてはまだまだ分からないことがたくさんありました。A型肝炎とB型肝炎は1960年代半ばまでに原因ウイルスが明らかにされますが、その結果としてA型でもB型でもない肝炎が存在することが分かり、臨床とともに生化学研究が活発に行われていました。そうした時代背景もあり、私も肝臓の臨床とともに、分子生物学の領域での研究を進めたいと考えたわけです。
原因不明の肝炎は、1990年頃になってようやくウイルスが発見されます。これがC型肝炎です。
肝硬変、肝臓がんの臨床としては、特にC型肝炎に力を入れ、アルコール性肝障害や、薬剤性肝炎、自己免疫的な肝炎などの診断と治療に取り組んできました。
— 近年は肝臓病をめぐる様相も変化してきたそうですが。
最近注目されているのは、非アルコール性脂肪性肝疾患のNAFLD(ナッフルド)と、その中の炎症がともなう非アルコール性脂肪肝炎NASH(ナッシュ)です。
アルコールを飲まないひとやウイルス感染がなくても脂肪肝になり、炎症や線維化を伴って肝硬変や肝がんに進行するという疾患です。メタボリックシンドロームがあるとNAFLDやNASHを発症しやすく、肥満、高血糖、脂質異常が危険因子です。
C型肝炎は飲み薬による治療で減少していますから、今後はNAFLDやNASHが、肝硬変・肝がんの主な原因になるでしょう。
このように、肝臓病は時代によって様相を大きく変えてきました。日本では成人の2〜3割にNAFLDがあり、そのうち1〜2割がNASHです。さらに、そのうち5〜20%は、5〜10年で繊維化が起きて肝硬変になると言われています。
肥満・高血圧・脂質異常症・糖尿病は「死の四重奏」として知られていますが、脂肪肝を予防する上でも、メタボによる生活習慣病を防ぐことが重要になります。
東京クリニック— 幅広い疾患に対応できるドック・診療システムの充実
がん予防、早期発見とともに、生活習慣病の診療にも力を入れていきます。
著名な医師が多数在籍し、質の高い診療を展開
— 東京クリニックの診療科の特長についてうかがえますか。
東京クリニックには、著名な医師が名を連ねています。東大第三内科の先輩で、日本糖尿病学会の理事長を務めた赤沼安夫先生、骨粗しょう症外来の板橋明先生、また、脳神経外科では堀智勝先生などが在籍しています。総合診療科の北本清先生をはじめ、大学病院の教授クラスの医師がほかにも多数集結し、世界的な脳神経外科医である福島孝徳先生も専門外来で診療にあたっています。
私と同じ消化器内科には、大学の先輩であり、日本肝臓学会理事長をされた井廻道夫先生や、肝臓の低侵襲治療の名医である國分茂博先生もいます。
このように、東京クリニックは幅広い診療科で、他に例のない充実した体制を誇ります。最新の研究、臨床のキャリアを活かし、質の高い医療をバランスよく展開していけると思います。
がんと生活習慣病を二本の柱に
— 健康管理や病気予防について、今後はどのような考えをお持ちですか。
健康管理は、主に生活習慣病とがんの二本立てになります。
がんはやはり早期発見・早期治療に向けた健診・ドックが有効です。その上で、高血圧や脂質異常症などの生活習慣病や、肝機能異常に対する外来での診療機能を高めていきます。
今後は、最近の発がん傾向として上位を占める食道、膵、大腸、前立腺がんなどの検査をさらに充実させたいと考えています。また、日本人には肝細胞がん、胃がん、成人T細胞白血病など、感染症を原因とするがんが特に多いので、発がんに関係する感染症対策に力を入れていきます。
— 人間ドックなどの検診についてもご紹介いただけますか。
東京クリニックでは、通常のドックメニューに加え、MRIを用いた脳ドック、女性の方にはデジタルマンモグラフィと超音波検査を組み合わせた乳がん検診、婦人科検診も行っています。消化管内視鏡検査では苦痛の少ない経鼻内視鏡や鎮静下の検査も可能です。
血液検査では、My Nightingale(マイ・ナイチンゲール)という、これまでにはなかった生活習慣病リスク検査を人間ドックのオプションに加えました。少量の血液から250項目の検査をし、発症リスクをスコア化します。心臓年齢・糖尿病・コレステロール・脂肪酸・炎症などのスコアが得られ、気をつけるべきポイントが明瞭になります。
PET検査は、南東北グループの総合東京病院(中野区)、新百合ヶ丘総合病院(川崎市)で、実績のあるPET—CTがんドックを受診可能であり、検査結果は当院で継続的な健康管理に役立てることができます。
皆様には、温かみのある快適な高機能クリニックとして、お気軽にご利用いただければ幸いです。
●HTLV-1 RexタンパクによるIL-2Rα mRNAの安定化の成人T細胞白血病発症への寄与.
●XenopusのRNA結合タンパクVigilinの解析.In vitro selection法にて,結合RNAを解析.Dystrophin RNAとの関係.
●HCV RdRp NS5Bに対するアプタマーRNAの作成,HCV増殖に抑制的に働く.
●NS5Bが結合するヒト肝臓mRNA3’- UTRの同定.Gal-1, RPS4X mRNA+3’-UTRに結合.
●細胞内のProteinase Inhibitor-9(PI-9)は免疫細胞からの攻撃を防ぐ働きがあると想定される.エストロゲンが肝細胞にPI-9の発現誘導することを見出し,エストロゲンが肝炎の免疫に抑制的に働く可能性を考えた.
●スカベンジャー受容体は,変性したLDLをマクロファージに取り込み,動脈硬化を引き起こすといわれた.その遺伝子構造の解析を行った.
医療法人財団 健貢会 東京クリニック
■ 〒100-0004 東京都千代田区大手町2-2-1 新大手町ビル 1階・地下1階・地下2階
〇 東京クリニックは、東京駅・大手町という日本の中心地において、名医による診療に加え、幅広い疾患に対応できる診療と健診・人間ドックシステムを構築しております。
〇 高度な専門外来を備えた「診療の羅針盤」としての役割とともに、がんの予防と早期診断、生活習慣病の継続的な診療など、健康維持のための最良のパートナーとして患者さん一人ひとりの信頼に応え得る質の高い医療を提供してまいります。
〇 急性期病院に匹敵する高度・先進医療機器を導入する高機能化クリニックとして、必要な検査を可能な限り迅速に行うことができ、すみやかな診断と治療方針の決定へとつながります。
【 診療科 】
■消化器内科
■総合診療科
■内科
■糖尿病内科
■内分泌・代謝内科
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■呼吸器内科
■小児科
■皮膚科
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■再生・修復医療外来
■渡航外来
● JR東京駅丸の内北口より徒歩5分
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